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前十字靭帯断裂の治療と手術

前十字靭帯断裂の治療と手術

膝関節の屈曲運動に関わる靭帯の中で大腿骨と脛骨間の靭帯を前十字靭帯と呼びます。
前十字靭帯は加齢的な変化を伴い、肥満や激しい運動後、転倒やホルモン異常により靭帯に負担がかかり完全に断裂するか一部が断裂(部分断裂)して患肢を挙上し負重時に痛みを感じてビッコを引くことが多いです。

発症年齢と犬種

4歳以上での発症が多く、以前は大型犬で見られたが最近は小型~中型で多く見られます。

発症
しやすい
犬種

●ゴールデンリトリバー    
●ラブラドールリトリバー
●シベリアンハスキー

●ロットワイラー
●セントバーナード 
●柴犬

●アメリカンコッカースパニエル
●ビーグル
●トイプードル

●ヨークシャーテリア
●チワワ
など

症状

痛みを伴うビッコ(急性、慢性的)

痛み止めの薬を飲んでも完全には治らない

膝を曲げにくくなりお座りすると患肢が外に流れる

膝関節が腫れる(時に内側)

膝を曲げると「パキッ」と音がする(内側半月板損傷)

患肢の筋肉が痩せてくる

膝蓋骨内方脱臼が併発している場合がある

診断

1

整形外科検査

脛骨前方引き出し試験(ドロワーテスト)、脛骨圧迫試験 

2

歩様テスト、お座りテスト

3

レントゲン検査

脛骨が前方変位、関節内の白い影(ファットパットサイン)

4

変性性関節症 膝蓋骨、
大腿骨、脛骨に骨棘形成

手術

断裂した靭帯は再生ができません。手術をせず痛み止めやサプリメントで様子を見る場合もあります。肥満の場合は膝への負担があるため必ずダイエットを進めています。
基本的には外科手術が必要となります。手術法は以下の方法で行います。

関節嚢外固定法(ラテラルスチャー法)

大腿骨と脛骨をナイロン糸で締結して膝関節を安定化させます。
膝が安定するのに1ヶ月程度かかります。ナイロン糸が早期に緩むとビッコが改善しない場合があります。
体重が軽い小型犬ではこの手術を適応することがあります。

脛骨高平部水平化骨切り術(TPLO)

脛骨近位を扇状に骨切りをして尾側に移動することで脛骨と大腿骨の位置関係を正常にする矯正骨切り術です。特殊なプレートを使用して固定します。この術式は膝関節を力学的に安定できるため早期に患肢が負重できます。
当院では7㎏以上のワンちゃんではこの術式を薦めています。

リハビリテーション

術後は病院からの指示によるリハビリテーションを行います。

1

絶対安静

病院管理で術後3日間は保護包帯を巻いて鎮痛剤、点滴、
抗菌剤の投与をします。

2

運動制限

退院後1週間は保護包帯を装着して、抗菌剤、鎮痛剤、サプリメントを投与します。フローリングや階段を避けて散歩などの軽度の運動を行ってください。

1

運動制限なし

術後10日目に抜糸をします。サプリメントを継続投与していきます。1週間に1回の温熱療法(近赤外線照射)、注射で患部の痛みや炎症を抑えます。また早歩き、坂道運動、ストレッチなどを指示する場合もあります。術後2か月目からは2週間に1回来院してリハビリを行います。

術後経過

経過は個人差がありますが2週間ぐらいで負重可能となり1~3ヶ月で正常歩行ができます。萎縮した筋肉が元に戻るためには6か月ぐらいは必要です。
膝蓋骨脱臼や半月板損傷を合併している場合は機能回復が遅れる場合があります。

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